「生産台数は1億台」ホンダのスーパーカブが世界一売れたバイクになった本当の理由

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なぜそんなに売れたのか。経営学者の楠木建さんは「スーパーカブは1957年の発売から現在まで、技術や構造をそのまま維持している。つまり余計な機能を加えていない。そこがすごい」という。独立研究家の山口周さんとの共著『「仕事ができる」とはどういうことか?』(宝島社新書)より一部を抜粋する――。(第1回)

【楠木】グローバルで成功を収めた日本の会社というか、特定の商品と言ったほうが正確ですが、ホンダのスーパーカブ。これは化け物のような工業製品です。

最近、ある本を読んで「へぇ?」と思ったんですけど、スーパーカブがこれまでに世界でつくられたモビリティ商品のなかで、もっとも累積で売れているんですね。世界生産台数が1億台を超えている。

しかも、現役の商品として今でも日々記録を更新し続けている。何がすごいのかというと、日本で売っているスーパーカブは1957年の最初のモデルと基本的に同じ技術や構造をそのまま維持しているということです。

これは掛け値なしに偉業だと思うんですね。スーパーカブはものすごく「役に立つ」ものだったんですけれども、それが本質みたいなものをがっちり捉えすぎちゃっていて、「もっと役に立つ」の方向に行くというよりも、結果的にそれとは別系統の何かしらの「意味」を持つところまでいった。

そういう日本発のケースというのはほかにもあって、僕が手伝っている会社で言うとファーストリテイリングのユニクロ事業はそこを目指していると思うんですよね。大衆に向けたマス・プロダクションだけれども、「用の美」というか、役に立つを突き詰めていった先に美意識が出てくる。独自の意味を持つようになる。

これは日本発のイノベーションのひとつのモデルだと思います。ところが、多くの会社は先ほどのリモコンの例にもあるように、効用がどんどん小さくなるにもかかわらず、余計な機能を使う、加えるという形で「役に立つ」の方向へ無理していってしまう。

スーパーカブのほうがビックバイクよりも“情緒的”なものになった
【山口】スーパーカブが面白いのは、スーパーカブを製造して提供する企業側ではなく、その製品を受け止める市場側が意味をつくっていった、というところにあると思うんです。もともとホンダはハーレーダビッドソンのようなビッグバイクでアメリカ市場に進出しようとしたけれども、なかなかうまくいかなかった。

そんなときにスーパーカブを営業の移動用に使っているホンダの社員を見た販売店員に、「むしろあっちのほうが欲しいんだけど」と言われて売り出したら、それまでの「ヘルズ・エンジェルスのような無頼漢たちの乗り物」というバイクの凶悪なイメージが、善良でナイスな人たちによって「健全ですごく便利な乗り物」というイメージに変わっていった。

市場の中でユーザー側が勝手にスーパーカブのイメージをつくっていったというところがありました。ビッグバイクというのは移動手段のツールというよりも情緒的なツールで、そういう意味では「役に立つ」より「意味がある」ものですね。

それを売ろうとして結局はうまくいかなかったところ、移動手段としてきわめて便利で「役に立つ」スーパーカブが売れたところ、市場の中で「善良でナイスな人たちの乗り物」という意味まで生まれてしまった。

https://www.msn.com/ja-jp/news/money/生産台数は1億台-ホンダのスーパーカブが世界一売れたバイクになった本当の理由/ar-AANge6x

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Source: バイク速報

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