日本橋の景観はいったいどうなる?「首都高都心環状線地下化で失われるもの」

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東京・日本橋の上を通る首都高都心環状線を地下に移す工事が進んでいるが、地下ルートの開通は2035年、全面撤去は2040年の予定となっている。高架橋の撤去で日本橋の景観は一変する予定でなのだが、難工事などの課題もいろいろ待ち受けている。

区間のほとんどが日本橋川を覆う高架橋で、日本橋周辺の景観問題はたびたび指摘されてきた。都心環状線地下化について、今後の見通しを清水草一氏が分析する。

■首都高は世界に誇る都市景観だ!
明治・大正における日本の作家たちに大きな影響を与えたとされるモーパッサンはパリのエッフェル塔を毛嫌いしていたという。1964東京五輪に向けて作られた首都高、同じく毛嫌いするだろうか

例えば、「東京タワーがなくなれば、芝公園の景観がよくなる」という人がいるだろうか。首都高は、見方によっては、東京タワーにも匹敵する東京を代表する景観のひとつ。それがまったく理解されていない(美醜の判定に正解はないですが……)。

パリにエッフェル塔が建設された当時、その景観を醜いと嫌う文化人が多数おり、モーパッサンは「パリで塔が見えないのは、この場所だけだ」と、しばしばエッフェル塔のレストランで昼食をとったというが、現在は、パリを象徴する景観になっている。美意識は常に変遷するものなのだ。

首都高は、東京タワーと同じく、戦後日本の高度成長期の突貫工事の象徴である。絶望的な交通渋滞を緩和するため、そして64年開催の東京オリンピックに間に合わせるため、首都のすき間に無理矢理クネクネと高架道路を通した、このグランドデザインなき都市計画こそ、昭和のダイナミズム。この猥雑さこそ東京が世界に誇る都市景観だ。つまり首都高は、我々日本人の歴史的建築遺産なのである。

首都高は決してダサくない。ダサいどころか超クールである。まさにレトロなSF映画の世界。都心環状線など、建設から半世紀以上を経過した古い路線ほど、クールさに満ちている。

それを地下に隠し、明治日本が西洋に倣って建設した石の橋(日本橋)を麗々しく青空の下に復活させて喜ぶのは、感覚があまりにも古典的すぎないか?

日本橋地下化の完成予想図を見ると、20年後の日本橋付近は、どこかで見たような心地よくも人工的な、なんの深みもない水辺空間になるらしい。

一方、日本橋に隣接する首都高江戸橋JCTの俯瞰写真は、今でも日本および東京を代表する景観としてよく紹介される。今後再開発された日本橋がそうなることは、決してないだろう。

私は今年3月、自らのフェラーリ(328GTS)で、早朝の日本橋に行ってみた。

それは、想像したよりもはるかに美しい光景だった。フェラーリがたたずむ日本橋は、上空の首都高の造形美と照明によって、宮殿のエントランスのように見えた。

この景観が失われるのは実に惜しい。

https://bestcarweb.jp/feature/column/344808


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Source: バイク速報

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