杖をついていても合格、高齢者の免許返納が一向に進まない残念な理由

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講習を受けていた老人がキレた

運転に自信がある高齢者ほど危ない―1月中旬、関東某所にある教習所で「高齢者講習」の様子を取材すると、そのことを象徴する場面に出くわした。実車講習に参加していた82歳の男性が、教習車に乗り込んだ途端、激昂したのだ。

「初めて乗る車で、操作がわかるわけないだろ!」

車の外まで聞こえる怒鳴り声をあげる男性を、教官が必死になだめている。どうやら発進前の手順に手間取り、それを指導されてキレたようだ。

何とか発進はしたが、その運転も恐ろしかった。ウインカーと逆方向に曲がったかと思えば、蛇行に逆走、S字やクランクでは路肩に乗り上げる……。

講習が終わった後、記者が声をかけると、怒りが収まらぬ様子で男性はこう語りだした。

「教習車に乗り込んで発進しようとしたら、『ちゃんとシートベルトしてください』『ギアはドライブに入れるんですよ』と次々に言われて、頭に血が上ってしまった。

俺は普段畑作業のために軽トラックに乗っているけど、すぐ近くの畑に行くのにわざわざシートベルトすることはないからね。教習所内のコースもおかしいよ。幅が狭すぎるし、バイクやら他の教習車やらがあちこち走り回っている。ウインカー出して曲がったと思ったらすぐに一時停止で、次に信号待ち。それで横断歩道を越えたら踏切だろ?こんな道、実際にはありえないじゃないか。

何より、教官の小僧の猫撫で声がいやらしい。思ってもないくせに『お上手ですね~』と言う。少しミスしただけで、『いま逆走してますよ』『あーもう少しでしたね』などと人を小バカにしたようなことを言って、年寄りの自信をなくさせるための講習だとしか思えない」

聞けばこの男性は、「認知機能検査」も3度受検してギリギリで合格したという。それでも、免許を返納するつもりはないと断言した。

「(記者を指さし)あんたらがオギャーと泣いてた頃から運転している。ぶつけたことはあるけど、死亡事故は一度もない。畑もスーパーも仲間の家も、ぜんぶ軽トラで行っているのに、免許がなかったら何もできない。免許返納なんてとんでもないよ」

担当した教官にも話を聞くと、ため息をつきながらこう語った。

「ここまで危険な方はごく一部ですが、運転させていいかギリギリ、という高齢者は多いですね。私が担当したなかには、講習で頭に血が上ってしまい、帰り道で交通違反をして白バイに切符を切られたという人もいました。腕を骨折している方が『高齢者講習』を受けに来たこともありますが、ハンドルが握れないので、他の高齢者の運転を『見学』するという形で講習修了。当然、杖をついている方でも免許更新できます。危険運転をする高齢者からなぜ免許を取り上げないのか、という批判があるのも理解しています。しかし我々としては、国から指示された内容を実施するしかないんです」

約9割の高齢者が免許更新できている背景には、大票田である「地方の高齢者」からの批判を恐れ、政治家が本腰を入れて制度を作らないからだという見方もある。

免許返納が進まない現状について、自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏はこう語る。

「中国では、70歳以上になると記憶力や判断力、反射神経などのテストが行われ、それにパスしないと免許更新ができません。『ほとんど落ちる』と言われているほどの厳しい内容です。一方、日本は諸外国に比べても極めて免許制度がゆるい。自分の車で夜中に徘徊してしまうほど認知機能が落ちている高齢者もいますが、そういった人でさえ免許を更新できてしまう。高齢ドライバーのご家族からは、『いくら言っても免許返納してくれないから、更新制度をもっと厳しくしてくれ』という声もよく聞きます」

https://gendai.media/articles/-/145690

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Source: バイク速報

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