このような改正の背景には、大型(2027年予定)、中型車(2026年予定)でもいよいよAT免許が導入されることを受け、運転免許取得のための教習をAT車のみとし、追加教習を受けることでMT車も運転可能(限定解除)とするのが現実的ということになったようだ。この改正により、いままでなら「選択肢があるなら」とMT車教習を選んでいたひとも基本的にはAT車で教習することとなるから、揃える教習車もほとんどをAT車で用意すればいいこととなり、より効率的な教習を受けることができる。
ただ、免許の種類でAT限定免許の設定にタイムラグもあるし、教習所の投資(AT教習車の増車など)や教習車の入れ替えなどもあり、改正後への対応には移行期間が設けられている。ただちに厳密に改正後の流れで教習が行われるということでもないようである。
2023年版警察庁統計によると、2023年中の運転免許試験実施状況における普通免許では、合格者数ベースでみると普通免許合格者数116万4801人のうち、AT限定免許での合格が78万9713人となり、全体の67%がAT限定免許合格者数となっている(意外に少ないような……)。もちろん必要があってMTで免許を取るひともいるだろうが、「選べるのなら」とMTでの教習を選ぶひとも目立つようなので、そもそもATとMTの選択肢がなければ、「追加教習を受けてまで……」というひとは減り、かなり絞り込むことができるとの判断もあったように感じる。
ただ、4時間とされる追加教習のなかで、クラッチ操作を伴う手動変速について学ぶことに異論も出ている。AT限定免許導入予定の中型や大型車、つまりトラックやバスといったプロドライバーの世界を心配する声もある。
確かにトラックやバスといった車両でも2ペダル、つまりAT仕様車の導入が進んでいる。ただ、走行距離で100万kmになるのも当たり前といわれるトラックやバスの世界では、日々の使用状況が一般乗用車と根本から異なるとはいえ、長期保有するケースも多く、日本全国津々浦々を見渡せば3ペダル、つまりMT車がいまもなお現役で活躍していることは珍しくない。
「働き方改革」のもと、AT車の導入は今後さらに進んでいくことになるだろうが、その過渡期にはどうしてもATとMTが混在する事業者のほうが目立ってくることになるだろう。「このような状況下ではAT限定免許で事業者へ入社後、新人研修を受けたとしても実際のオペレーションでの不具合も懸念されているようです。また、たった4時間ともいえる追加教習でのみMT車の操作を学んで限定解除というのも、安心・安全な運行という面でもリスクが高まるとの声が出ています」とは事情通。
■車両導入と人材教育により事業者の負担が増える
トラックやバスでのMT車といっても、「フィンガーシフト(フィンガーシフトコントロール)」というシフトストロークの短い電磁エア式の変速機となっている車種が圧倒的に多く、これは疲労軽減や…
続きを読む
Source: バイク速報