そもそも、私の記憶が確かであれば、2015年頃までパック旅行などは「最少催行人数2人以上」と明記されていて、ソロで申し込みすることはできなかった。部屋に露天風呂がついているような高級温泉旅館なども原則2人以上でないと予約すらできなかった。女性のひとり客などは「自殺の怖れがある」などと警察に通報されたりもした。それは、「女性が一人で旅行なんてするわけがない」という偏見に似た刷り込みがあったからでもある。
旅行業界も、かつてはソロ客など相手にしていなかった。とある旅行関連の企業にかつて「ソロ旅」について提案したこともあるが、「ひとり旅なんてやってる人間なんて少ないし、そこを狙っても売上的に無意味」とけんもほろろだった記憶がある。ところが、今や1人から申し込めるツアーも充実しているし、温泉旅館も一人から泊まれるようになっている所が激増した。旅行会社ではわざわざ「ソロ旅企画」なるものを特集しているところもある。もはや無視できない規模に需要があるからである。そうした変化の兆しは、コロナを契機というより、それ以前からあった。
そもそもそソロ旅の市場規模がどれくらいあるかを理解している人は少ない。コロナ禍期は異常値だったので、2019年の数字を見てみることにする。旅行・観光動向調査によれば、年間のソロ旅(国内旅行)の延べ人数は1億1370万人。日本の全人口に匹敵する人が年間ソロで旅行していた。さすがに家族の旅行延べ人数には負けるが、夫婦・パートナーでの9900万人、友達同士の7050万人より圧倒的に多いのがソロ旅客なのである。
消費額でいっても、全体21兆9,312億円に対して、4兆1000億円はソロ旅である。約2割がソロ客による消費で占められている。もちろんここで計上されているソロ旅はすべて独身者というわけではない。
続きを読む
Source: バイク速報