タクシー業界が幾重もの逆風にさらされ、全国各地で値上げを求める動きが広がっている。新型コロナウイルス禍で激減した利用客の回復を見込んでいたが、追い風は吹かないまま。逆にインバウンド(訪日外国人客)需要を取り込むため、導入を進めてきた「配車アプリ」が思わぬ負担となる事態も生じている。なぜ厳しい状況に直面しているのか。「誤算」の背景を探った。
静岡市の永田信広さん(61)は25年間、静岡県中堅の千代田タクシー(静岡市葵区)で勤務するベテラン運転手。コロナ禍収束から約2年たっても利用客数が以前の水準に戻らないのを日々、実感している。「物価高に悩むお年寄りが、昼間の通院時にタクシーをあまり使ってくれなくなった」と話す。
会社員らの夜の会食も様変わりした。「多くが1次会で終わる。はしご酒の客や、終電を逃した客も急減した」(業界関係者)。割増料金が適用される深夜早朝帯の利用客の減少は大きな収入減になる。
事態を重く見た同社は4月7日、660円の初乗り運賃で乗れる距離を現行の「1・2キロ」から「1・043キロ」に短縮し、加算運賃を「279メートルまで90円」から「265メートルまで100円」に変更する要請書を中部運輸局に提出した。
静岡地区では2023年9月にも初乗り運賃が600円から660円にアップしたばかり。今後、他社から同様の申請が続けば、約1年半の間に2度目の値上げとなる可能性がある。
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Source: バイク速報